「目を痛がって開けられない」「黒目が白く濁って、真ん中に穴が開いているように見える」——それは角膜穿孔(かくまくせんこう)という、角膜に穴が開いた非常に危険な状態かもしれません。 角膜の傷は進行が早く、放置すると失明や眼球そのものを失うことにつながることもあります。一方で、適切なタイミングで手術を行えば、目を残し視覚を守れる可能性があります。この記事では、角膜穿孔と、その治療法のひとつ「角膜転位術」について、当院の実際の症例写真とともに解説します。
角膜穿孔とは?角膜に穴が開く重い状態
角膜は、黒目の表面をおおう透明な膜で、光を目の中へ取り込む大切な組織です。とても薄いながら何層かに分かれており、深い傷(角膜潰瘍)が進行してこの層を突き抜けてしまうと、角膜に穴が開いた状態=角膜穿孔になります。
穴が開くと目の中の水分が漏れ出し、感染が中まで広がったり、目の中の組織が傷口に引き込まれたりして、短時間で状態が悪化します。角膜穿孔は「様子を見る」余裕のない、緊急性の高い状態です。
どんなときに起こる?原因とサイン
角膜穿孔は、次のような原因で起こる深い角膜の傷が進行して生じることがあります。
- ケンカ・草・爪などによる外傷
- 治りにくい角膜潰瘍の進行(感染を伴うことも)
- 逆さまつげ・目の乾き(ドライアイ)など、角膜を傷つけ続ける要因
次のようなサインが見られたら、角膜の重い傷を疑って早急に受診してください。
- 目を強く痛がる・つぶって開けない・しきりに気にする
- 白目が真っ赤に充血している、目やに・涙が多い
- 黒目が白く/青白く濁る、表面の一部がへこむ・穴のように見える
治療|角膜転位術という選択肢
浅い傷であれば点眼などの内科的な治療で治ることもありますが、穴が開いた・開きかけている重い角膜の傷では、傷口を物理的にふさぐ手術が必要になります。その代表的な方法のひとつが「角膜転位術」です。
角膜転位術は、その子自身の健康な角膜(と結膜)を、傷ついた部分の上へずらすように移して穴をふさぐ手術です。自分の組織を使うため角膜の透明性を保ちやすく、目そのものと視覚を守ることをめざせます。手術は目という非常に繊細な組織を扱うため、手術用顕微鏡を使い、眼科を専門とする獣医師が担当します。
ただし、傷の深さ・感染の程度・全身の状態によって適した術式は異なり、すべてのケースで同じ方法・同じ結果になるわけではありません。どの治療が最適かは検査のうえで判断します。
実際の症例(術前・術直後・術後1ヶ月)



※実際の症例写真です。傷の状態や治り方には個体差があり、すべての症例で同様の経過・結果が得られることを示すものではありません。適応・術式は検査により判断します。
受診の目安|角膜の傷は時間との勝負
角膜穿孔などの緊急事態の可能性があります。時間の経過とともに悪化するため、できるだけ早く動物病院へ。
角膜の重い傷は、少しの時間の差が結果を大きく左右します。「おかしいかも」と思ったら、迷わずご相談ください。当院では手術用顕微鏡と眼科専門の診療体制で、こうした緊急の角膜の手術にも対応しています。
眼科のお問い合わせ
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個々の診断・治療に代わるものではありません。掲載の機器説明・症例写真は効果や結果を保証するものではなく、手術の適応は検査により判断します。気になる症状がある場合は動物病院を受診してください。

