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犬の胆嚢粘液嚢腫が「破裂」したら?
胆嚢摘出手術と実際の症例

以前から指摘されていた胆嚢粘液嚢腫が悪化し、胆嚢破裂に至った実際の症例を、検査画像・術中写真とともに獣医師が解説します。

監修:岩佐 孝生(DCC動物病院 鶴ヶ島 院長)公開日:2026.08.13
目次
  1. 胆嚢粘液嚢腫とは?重篤化すると「胆嚢破裂」に
  2. どんなときに起こる?原因とサイン
  3. 治療|内科治療か、外科手術(胆嚢摘出)か
  4. 実際の症例(エコー所見・手術の様子)
  5. 受診の目安|こんな症状が見られたら
  6. 軟部外科のお問い合わせ

「なんとなく食欲がない」「吐いてしまった」——それだけだと単なる胃腸の不調に見えても、その裏で胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)が進行しているケースがあります。悪化すると胆嚢が破裂し、緊急の外科手術が必要になることも少なくありません。この記事では、内科治療中に胆嚢が破裂し、緊急の胆嚢摘出手術に至った実際の症例を、エコー画像・術中写真とともにご紹介します。

胆嚢粘液嚢腫とは?重篤化すると「胆嚢破裂」に

胆嚢粘液嚢腫とは、胆嚢の中に本来よりも粘度の高い胆汁(ゼリー状〜粘土状の粘液)が異常にたまってしまう病気です。胆汁の流れが悪くなることで胆嚢が過度に拡張し、次第に胆嚢の壁が薄く脆くなっていきます。

好発犬種として、シェットランド・シープドッグやミニチュア・シュナウザー、コッカー・スパニエルなどが報告されていますが、犬種を問わず発症する可能性がある病気です。好発年齢は7〜12歳前後とされ、シニア期に入った犬の健康診断で偶然見つかることも多くあります。

シェットランド・シープドッグ / ミニチュア・シュナウザー / コッカー・スパニエル / 中高齢犬(7〜12歳)など

進行して粘液の蓄積がさらに増えると、胆嚢内の圧が高まり、壁が虚血・壊死を起こして胆嚢破裂に至ることがあります。破裂すると胆汁が腹腔内に漏れ出し、重度の腹膜炎を起こして命に関わる状態になります。

どんなときに起こる?原因とサイン

胆嚢粘液嚢腫は、次のような要因と関連して発症しやすくなるとされています。

  • 甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)などの内分泌疾患
  • 高脂肪食など、胆汁の性状に影響する食生活
  • 中高齢での加齢による胆嚢機能の低下

初期は無症状のことが多く、健康診断のエコー検査で偶然見つかるケースも少なくありません。次のようなサインが見られたら、胆嚢の状態が悪化しているおそれがあります。

  • 食欲がない、または食欲低下が数日続く
  • 嘔吐を繰り返す
  • 元気がなく、ぐったりしている
  • お腹を触ると痛がる
  • 白目や皮膚が黄色っぽい(黄疸)
POINT
胆嚢破裂は、腹部エコー検査で「胆嚢の輪郭が不明瞭になる」「胆嚢周囲や腹腔内に腹水がみられる」といった所見から診断します。破裂すると胆嚢内の圧が下がるため、粘液嚢腫特有の輪切り状(キウイフルーツ様)の所見がむしろ見えにくくなることもあり、これまでの経過を踏まえた評価が重要です。

治療|内科治療か、外科手術(胆嚢摘出)か

症状がなく、エコー検査で偶然見つかったような段階では、利胆剤の投与や低脂肪食への変更、定期的なエコーでの経過観察といった内科治療で管理できる場合があります。一方で、次のような状態になった場合は外科手術(胆嚢摘出術)が必要と判断されます。

  • 胆嚢破裂、またはその疑いがある(緊急性が最も高い状態)
  • 肝酵素値が急激に上昇している
  • 内科治療を行っても嘔吐・食欲不振の改善が見られない
  • エコーで胆嚢壁の菲薄化や層構造の乱れなど、破裂リスクの高い所見がある

胆嚢摘出術は開腹による全身麻酔下の手術です。破裂している場合は、腹腔内に漏れ出した胆汁や腹水を確認しながら、慎重に洗浄・摘出を行います。全身麻酔に耐えられる状態まで、点滴による脱水・電解質バランスの補正を行ってから手術に進むのが基本です。

実際の症例(エコー所見・手術の様子)

今回ご紹介するのは、以前から胆嚢粘液嚢腫が確認され内科治療で経過観察していた犬(雑種犬・9歳・体重3kg)が、突然の食欲低下・嘔吐を主訴に来院し、検査で胆嚢破裂と診断された症例です。点滴による全身状態の管理後、24時間以内に胆嚢摘出手術を行いました。

CASE エコー検査の経過

内科治療時

胆嚢内に粘度の高い胆汁が充満し、内部が不均一なエコー像として確認できます(胆嚢粘液嚢腫の典型的な所見)。

※実際の症例写真です。破裂すると胆嚢内の圧が下がるため、粘液嚢腫特有の所見が見えにくくなることがあります。診断は経過とあわせて総合的に行います。

CASE 手術の様子

開腹時

開腹すると、胆汁を含んだ茶褐色の腹水が確認されました。胆嚢破裂による胆汁性腹膜炎が起きていたことがわかります。

※実際の症例写真です。傷の状態や治り方には個体差があり、すべての症例で同様の経過・結果が得られることを示すものではありません。適応・術式は検査により判断します。

POINT
術後は入院管理のもとで抗生剤や輸液による全身管理を行い、状態の安定を確認してから退院となりました。今回の症例では、術後3か月現在、肝数値は正常範囲まで回復し、自宅で元気に過ごしています。

今回の症例は幸運にも救命できましたが、胆嚢粘液嚢腫は重度の閉塞や破裂を起こす前に手術することが望ましい疾患です。破裂後の緊急手術は、胆汁性腹膜炎のリスクや麻酔・手術の負担が大きくなるため、症状が出る前の早期診断・早期治療がより安全な選択となります。

受診の目安|こんな症状が見られたら

今すぐ受診
元気消失を伴う急な嘔吐の繰り返し/お腹を触ると痛がる/ぐったりして動かない
胆嚢破裂による胆汁性腹膜炎の可能性があります。対応の早さが予後を左右するため、できるだけ早く動物病院へ。
早めに受診
食欲低下が1〜2日続く/時々吐く/体重が減ってきた/白目や皮膚が黄色っぽい(黄疸)
まずは相談を
胆嚢粘液嚢腫を指摘されたことがあり、目立った症状はないが心配なとき。定期的なエコー再検査での経過観察を。

すでに胆嚢粘液嚢腫を指摘されている犬で、こうした症状が見られた場合は様子を見ずに早めにご相談ください。当院では軟部外科の専門的な診療体制で、こうした緊急の外科手術にも対応しています。

軟部外科のお問い合わせ

DCC動物病院 細江町

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〒431-1304
静岡県浜松市浜名区細江町中川5433−1

DCC動物病院 鶴ヶ島

DCC動物病院 鶴ヶ島外観

〒350-2213
埼玉県鶴ヶ島市脚折1145−1

愛犬の胆嚢の状態が気になる方へ

胆嚢粘液嚢腫を指摘されている方も、気になる症状がある方も、まずはエコー検査で今の状態を確認しましょう。

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個々の診断・治療に代わるものではありません。掲載の機器説明・症例写真は効果や結果を保証するものではなく、手術の適応は検査により判断します。気になる症状がある場合は動物病院を受診してください。

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